「書きかけの歳時記」
2008/03版 その3

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「補修用工具」として自動車にカッターナイフを常備するのは「正当でない刃物の携帯」に当たるのか?(その 1) [雑感]

24 時を廻った頃。車で買い物へ行った帰り、亀戸のサンストリート前の路上で路肩に停車していたところ、若い警官(といっても 30 歳前後)に声をかけられた。

警1「地元の方?」
五「ええまあ。墨田ですけど」
警1「ああ、そうですか。墨田ね‥‥‥」

「一応免許証を見せてください」というので、渡す。「ちょっと車内を見せてください」と言うので、土浦であんな事件があったあとだし、別に拒む理由もないので、「ああ、いいですよ」と答える。

その警官がマグライトで車内を見ていると、さらに別の若い警官がやってきた(先ほどよりもさらに若干若いように見えた)。2 人目が「一応トランクも見せてください」というのにも「いいですよ」と協力。荷室の荷物を見ながら「刃物とかはないですよねぇ‥‥‥」というので、「カッターナイフならありますけどねー」と答えたところから急転直下。

警2「えっ! どこにですか!」
五「ダッシュボードの中ですけど」
警2「ちょっと見せてもらっていいですか」
五「ちょっと待って‥‥‥」

一旦車を降りて警官と一緒に荷室の近くにいたので、運転席に戻り、グローブボックスからカッターナイフ(文具店やホームセンターなどでお馴染のアレだ)を取り出して渡す。

五「これですが」
警2「あー、これはー。‥‥‥ちょっとお話しを伺いたいんですけど」
五「? まあいいですけど」

こちらには疾しいことなどない。なにが気にくわないのか聞いてやろうじゃないか。

そうこうしているうちに、一旦自転車のところへ行っていた最初の 1 人が戻ってきた。2 人目がカッターを 1 人目に渡す。

警1「うーん、これは長いな」
警2「何 cm ですかね」
警1「今ちょっと測るよ。‥‥‥ 8cm。」
五「長さってえと、銃刀法でしょ? 何 cm で駄目なんでしたっけ? 15cm?」
警1「いや、もっと短いよ。6cm まで。」
五「そりゃあおかしい。こんなのそこらのコンビニでも普通に売ってるもんでしょうが。それを持ってるだけで違法なわけ?」
警2「そうです。」
五「じゃあ何でそんなの売ってるのさ。触法性のあるものなら売るべきじゃないでしょうが」
警1「家とかで使うためのものですから」
五「なんだいそれは。」
警2「法律ですから」
五「長さが問題になるってんなら、はみ出てる分を折ってもらったっていいよ? こっちは切れればいいんだから」
警2「そういう問題じゃないんですよ。『正当な理由なく』持ってるだけで駄目です」
警1「仕事で使うんですか?」
五「いや、車の補修したり、買ったものを開封するためだけど」
警2「仕事ならいいんですが、プライベートは『正当な理由』になりません」
五「なにそれ。じゃあ、なんなら『正当な理由』になるの?」
警1「『仕事で』『毎日』使うんならいいですが、仕事以外とか、仕事でも『たまに』ならだめです」
五「おかしいじゃないの、そんなの。じゃあ、車の補修用のものを買って、その包装を開けるのはどうするの?」
警2「家でやってください」
五「車で使うものは車で開けないと意味ないでしょうが。じゃあ、(荷室を指して)このコンテナとか、あと小物でも箱なんかは最近盗難防止で買ったときに P.P. バンドで絞めてあるものがあるでしょ?」
警1「ああ、ありますね」
五「ああいうのは、手で切れる? 切れないでしょ。そういうのはどうするの?」
警1「家で切ってください」
五「車で使うんだってば。それともなに? 買った店で切ってもらえとでも?」
警2「そうです!」
五「んなアホな!」
警1「とにかく、これは凶器になるので、駄目です」
五「そんなこと言ったら、車なんてそんなのだらけじゃないの。ドライバーとかだってあるんだしさ」
警2「ああ、ドライバーも、プラスはいいですけど、マイナスは駄目です。凶器になるので」
五「おっかしいよそんなの!」

思わず笑ってしまった。もはや笑うしかないではないか。みなさーん、「車載工具セット」とか積んでると検挙の対象になるらしいですよー。そもそも、プラスとマイナスって、そんなに危険性に差があるか? 先が細ってる分だけ+のほうが危険じゃねぇか。もしかして、「切る」のだけが問題で、「刺す」可能性は考えてないのか?

2 人目が「ちょっと署に連絡するので待っててください」と言って自転車のほうへ去る。長くなりそうだったので、エンジンを切り、車体の後方へ移動。

五「非常用の工具まで駄目だなんて、そんなの話にならないよ」
警1「いや、法律ですから」
五「じゃあ、何か故障とか起きたらどうするの?」
警1「それでも、駄目なものは駄目です」

やがて 2 人目が戻ってきて問答再開。2 人目は気色ばんではいても言葉は比較的丁寧だったが、1 人目はむっつりしつつ既に高飛車。

警1「お仕事はなんですか」
五「コンピュータ関係ですが」
警1「今は配達かなにか?」
五「いや、買い物に行った帰りだけど」
警2「このナイフはなんで積んであったんですか」
五「いや、買ったものをすぐに開けるのに必要なことが多いし、車に何かあったときにもあると便利でしょ?」
警2「持ち歩く必要はないでしょう」
五「いや、車用の部材を買ってすぐに使うには開封する必要があるでしょうが」
警2「ナイフは要らないでしょう」
五「あのね、今は大抵の物はビニールで包装されてるでしょ? あれが手でピーっと開けられるなら要らないけど、そうじゃないでしょうが。手で開けられる?」
警2「その買い物は仕事で?」
五「いや、車の補修でだけど」
警1「仕事で使うのでなければ駄目です」
五「それはおかしいでしょうが」
警2「とにかく、8cm っていうことは、これはもう法律違反ですから。ちょっと、署の方にきていただいてお話しを伺いますから」
五「いいですよ?」

こっちもじっくりと話を聞いてみたいところだ。

押し問答をしていると、さらに同年代(1 人目よりは少し年上か?)の警官が 1 人やってきた。

警3「いやー、すみませんね、時間を取らせてしまって。‥‥‥ナイフは?」
警2「これです」(とカッターを渡す)
警3「あー、カッターか‥‥‥。(署には)連絡した?」
警2「はい」
警3「誰か来るって?」
警2「課長が‥‥‥」

3 人目はやや丁寧な対応だったが、問答はほとんどフリダシに戻る。

警3「お仕事はなにをされてるんですか?」
五「コンピュータ関係ですが」
警3「(車の中をマグライトで照らして見ながら)このナイフは車に積んであったんですか?」
五「ええ、ダッシュボードの中に」
警3「必要ですか?」
五「そりゃあ何かあったときに必要でしょう。何せ 10 年ものの車なんでね、いつなにがあっても不思議じゃない。」
警3「えっ、そんなに経ってるんですか?」
五「そうですよ? しかも、社用車で使ってたものをもらったんで、今いろいろといじってる最中ですよ。電装系とか。」
警3「車関係のお仕事?」
五「いや、だからコンピュータ関係だってば」
警3「それで車をいじるんですか?」
五「そうだよ。ETC つけた以外は全部自分でやってるんだから。」
警3「はあ。」

3 人目が荷室越しにインパネ附近を照らしてみているので、

五「あそこにカーナビ付いてるでしょ?」
警3「ええ、付いてますね」
五「あれだって自分でつけたんだから」
警3「えっ! そうなんですか?」
五「そうよ? この(後部 door の窓をコンコン叩いて示しつつ)バックカメラだって自分で付けたし」
警3「ええっ! ‥‥‥でも、配線が見えないですね」
五「そりゃあ、内装剥して中を通したんだもん、全部。」
警3「へえ! ‥‥‥(内側を照らして見つつ)内装を剥したにしては、きれいに仕上がってますねぇ‥‥‥」
五「ちゃんと剥してまた付け直したからね」
警3「はー‥‥‥すっげぇなぁ‥‥‥」
五「できることは何でも自分でやるからね。」
警3「‥‥‥こういうお仕事なんですか?」
五「だからコンピュータ関係だってば」
警3「それで電気いじっちゃうんですか。専門の方ですか?」
五「いや、だから車は専門じゃないけど。‥‥‥まあ、同じ弱電といえばそうだけど」
警3「だいぶ御詳しいんですか?」
五「まあ、回路書いたりはするからね」
警3「じゃあ、プロなんですね」
五「まあ、それで飯は喰ってたからねぇ」
警3「はー‥‥‥」
五「Sensor とかの線も全部自分で引っ張ったしさ」
警3「見えないようにですか」
五「そう。だからね、そういうことやってれば、線なんかよくちょん切ったりするわけよ。カッターがあっても不思議じゃないでしょうが」
警3「ニッパーじゃ駄目なんですか?」
五「皮をきれいに剥けないでしょ?」
警3「‥‥‥」
五「さっき『車で使わなきゃいけない用があるなら店で切ってもらえ』とか言われたけど、線なんて店で 10m 巻とかで売ってるの買ってきてるんだし、そんなの一々ちょん切ってもらったりとか、できるわけないでしょうが」
警3「あっはっはっ」

深夜のせいか、なんか話が繋がってない。

1 人目と 2 人目が「どうします? 署に行きますか?」「おまえ(この車に)一緒に乗ってく?」「でも、そうすると自転車が‥‥‥」「ああ、取りに来るのが大変か」「ええ」などと会話したあと、2 人目がまた連絡のために退場。一方、3 人目はしばらく車内をしげしげと見ていたが、

警3「‥‥あのカーナビ、いくらぐらいしました?」
五「んー、8 万 6 千円くらいだったかな」
警3「そんなに安いですか?」
五「DVD だからね。もう値崩れ起こしてるんで」
警3「えっ、そうなんですか?」
五「もう、市場が HDD に移行してるでしょ? だから。」
警3「はー。‥‥‥ DVD でも『すごいな』と思いましたけどねぇ」
五「やっぱりね、なにか操作する度に地図読み込んだりしてジコジコ待つから、応答性は全然違うよね」
警3「なるほどねー‥‥‥」

なんでも、よく「本当に自分で買ったものかどうか」の探りを入れる手段として「値段を訊く」そうなんだが、

警3「‥‥‥ご自分で付けたんですよね?」
五「そう」
警3「どれくらいかかりました?」
五「『時間が』ってこと? だったら、んー‥‥‥ audio も一緒に替えたから、合わせて 2 時間くらいかかったかな」
警3「そんなもんで付きますか!」
五「付けたねぇ。まあ、店で頼んでも 1 時間半くらいは待たされるから、いつもメンテとか頼んでる修理工場のおっちゃんには『いやぁ、そんなんで付けば上出来だよ〜〜』って言われたけど」
警3「そうですよね、結構早いですよね」
五「そうね。まあ、下調べはしてあったからね」
警3「そうか、audio と一緒でそれくらいね‥‥‥。‥‥‥外すのって、もっと早いんですかね?」
五「んー‥‥‥まあ、それはそうだねぇ」
警3「2〜30 分くらいですか」
五「そんなには早くないよ! やっぱり、1 時間くらいはかかるでしょう」
警3「そうですか? ‥‥‥いや、最近車上荒らしが多くてですね。よくカーナビなんかがやられてるらしいんですけど。3〜40 分くらいの間で」
五「あ〜、そりゃあね。だって、奴等はあとがどうなってようが気にしないでしょ? 目当ての物さえきれいなら、インパネとか取り付け金具とか、破壊しちゃっても構わないわけじゃない」
警3「‥‥‥ああ、そうですよねぇ」
五「きれいに付け外しするからそれなりに時間がかかるのよ。そうじゃなくて、単にナビだけ持ってくなら、インパネって大抵プラでしょ? 周りのプラごとでっかいハサミみたいなんで切っちゃったっていいわけだから」
警3「あー、そうですよねー。そうか、だから早いのか‥‥‥」
五「きっとそういうことでしょう。」

やっぱりそういうことだったか。

まあ、この辺りまではそれなりに必然性のある会話だったんだが‥‥‥

警3「じゃあ、ずいぶんいじったんですね」
五「まだ途中ですけどねぇ」
警3「だいぶお金かかったんじゃないですか?」
五「んー、まあ、細かいのは計算してないけど‥‥‥ナビと audio だけでも 10 万は超えてるねぇ」
警3「結構かかってますねぇ」
五「ビーコンも付けてるしね。ハンドルの向こうのインパネの上なんだけど」
警3「ええ、ええ、見えました!」
五「あのナビ Pioneer なんだけど、ビーコンだけで 2 万位してるし。Pioneer はビーコンが高いんだよね」
警3「Pioneer ねぇ。‥‥いいのはわかるんだけど、Pioneer は手が出ないっすよ、高くて‥‥‥」
五「いや、同じ class 同士で較べると、パナとかとたいして変わらないよ?」
警3「へえ、そうですか‥‥‥まぁ、私はあんまりナビは要らないんじゃないかと思うけど」
五「うん、私も地図自体はあんまり必要じゃないんだけどね、渋滞情報が取りたかったのよ」
警3「あ〜、都内を走るんだと、渋滞情報はあったほうがいいですよね、確かに」
五「そうそう。そのためにわざわざ高いのを承知でビーコンまで付けたんだから」
警3「なるほどねぇ‥‥‥」

ここまで来るとただの雑談である (^^;。そしてさらに‥‥‥

警3「この車、もらったんでしたっけ?」
五「そう。もう 10 年ものだしね」
警3「そんな、だからってもらえるもんなんですか?」
五「いや、『要らないなら廃車にしますけど』って言うからね。そういうくらいだから、結構痛んではきてるね」
警3「じゃあ、もうかなり走ってるんでしょう」
五「うん、10 万キロ超えてる」
警3「ずいぶん走りましたねぇ!」
五「でしょ。だからね、いつなにがあってもおかしくないわけよ」
警3「そりゃあそうですねぇ。じゃあ、いろいろ直したんだ」
五「んー、それなりにはね」
警3「やっぱりお金かかったんじゃないですか?」
五「まあ、メンテも極力自分でやってるし。名義変更も自分でやったしね。だから、もらうのにかかった費用も、前が社用車だったから、元のオーナーの登記謄本取る費用で 2 千円くらいね。あとは登録費用」
警3「へえ、自分で行ったんだ、この車で?」
五「そう。まあ、ほんとは軽の場合、車を持ってく必要はないんだけどね‥‥‥」
警3「じゃあ、このナンバープレートも自分で付け外ししたんだ!」

そう言いながらしゃがみこんでナンバーを示す警官はやけに嬉しそうだった (^^;

五「そうそう」
警3「ふ〜ん、陸運事務所へねぇ‥‥‥」
五「いや、軽の場合はね、陸運事務所じゃないの。」
警3「えっ、そうなんですか?!」
五「うん。普通の車は陸運事務所だけど、軽の場合は『軽自動車検査協会』っていう全く別の組織がやってるの」
警3「へええ、そうなんだ‥‥‥!」
五「でね、陸運事務所だと、足立の場合は六町の駅からそんなに遠くないんだけど、軽自動車検査協会の足立支部は、首都高の S1 ってあるでしょ? あれの足立入谷ランプの近くなのよ。軽はナンバーを自分で外して持ってくだけでいいから、車で行く必要は本来ないんだけど、むしろ車でないと行かれない」
警3「そうなんですか、そんな不便な場所にあるんだ‥‥‥。あの辺りって陸の孤島ですよね?」
五「そうね。もうすぐ『舎人ライナー』が開通するから、そうすると最寄り駅から 15 分くらい歩けば着くようになるけど、今はまだ最寄りの駅から歩くったって 1 時間じゃ着かない」
警3「そうなんだ‥‥‥。軽なんて自分でやることないから、全然知らなかった‥‥‥」
五「まあ、そうだよねぇ」
警3「『舎人ライナー』なんて、できても乗らないなぁ。高くて。」
五「まあね。どんだけ乗るんだか。」
警3「‥‥はー、いろいろやったんですねぇ。‥‥‥Tire も替えました?」
五「替えた。いや、前のオーナーがムチャクチャでね。4 輪バラバラの tire 履いてて」

ずるっとこけて見せる警官。

五「2 輪だけが同じブランドで、他の 2 輪はさらにそれぞれ別々の会社の履いてた」
警3「よくそれで走ってましたねぇ (^^;
五「そう。だからね、すぐに替えたの。そしたらまあ、見違えるように走りが良くなって」
警3「違いますか!」
五「違う。全然違いますね。いや、tire はやっぱり大事だと思いましたよ」
警3「思いましたか!」
五「思いました。高々 1 本 7 千円くらいの安い奴だけど、それでもこんなに違うもんかって、痛感した」
警3「7 千円くらいですか。もっといいの履いたほうがいいんじゃないんですか? 安全性に影響するし」
五「んー、それは山々なんだけど、もっと上の tire って、こういう軽用の size がないんで」
警3「あー、そうですかー」
五「そう。インチアップでもしないとね」
警3「うーん、それはなぁ‥‥‥」
五「一応、この車に乗用 tire の設定は元々あるにはあるんだけどね。このテのものとしては最大積載が小さいでしょ?」
警3「なるほど。」

どうでもいいけど、署に行くなら早く行ってくんないかな。こっちは薄着で寒いんだけど。

‥‥‥と思っていたら、2 人目が再度登場。

警2「いま、上司がきますんで、言い分はそちらに言ってください。それで、上司が納得すれば(← ここを強調)、帰ってもらって結構ですから」
五「ああ、はいはい」

まだここで待つんか。寒いんだけどな。

その後も 3 人目と「リアビューカメラ」の有用性について論じていると、さらに 4 人目ご登場。年輩の、見るからに「上司」って感じの人。

警4「いや、すみませんね、お待たせして」
五「ああ、はいはい」
警4「‥‥‥えーと、で、そのナイフは?」
五「いや、さっき渡したまんまだけど」

1 人目と 2 人目は 4 人目が乗ってきた PC のほうで話をしていたので、4 人目が声をかけ、カッターを持ってこさせた。それを受け取ると、

警4「あー、これねぇ‥‥‥。どこでも売ってるしなぁ‥‥‥」
五「そうでしょう? こういうの、仕事以外で車に積んでおくと違法だって言われても納得できないんだけど。配線コードやビニールテープをいちいち家に帰って切るとか店で切ってもらうなんてやってらんないし、緊急の補修もろくにできないでしょうが」
警4「まあね、旦那さんはこういうので人を傷付けるようにも見えないし、サバイバルナイフとかじゃあないんでまああれなんだけど、できるだけ降ろしといてくださいよ」

‥‥‥あっさり納得してませんか? 20 秒で結論が出ちゃったんじゃない?

さりげなく強調している部分が「肝」なのは、すぐにピンときた。なので、

五「そうですね。できるだけ降ろしておくようにしましょう」

ところが、わかってないのが 2 人いた。私の背後に立っていた 2 人目が吠える。

警2「もう絶対に持たないで下さいよ!」

まだ蒸し返すかおまえは。せっかく「上司」がそれとなく収めようとしてるのに。

五「『絶対に』ってどういうことよ。必要だったら使わざるを得ないでしょうが」
警2「だから、『正当な理由なく』所持することは許されないんですよ!」
五「非常用を兼ねて車用の物を車に積んでおくのがなんで『正当な理由』じゃないわけさ」
警2「仕事で毎日使うのでなければ違法です!」
五「だからさ、持ってるだけで違法なものを、何で普通に売ってるのさ。」
警1「家で使うためです」
五「おかしいでしょう? そもそも銃刀法に抵触するなら売らなければいいでしょうが。むしろ、6cm 以上のものを車に積んでおけないなら、最初からそれより小さく作ったものを売って欲しいよ、私ゃ」
警3「いや、切れなくなったら折って使うものですからね、ある程度の長さがないと‥‥‥」
五「そうは言ったって、6cm 以上の物は仕事以外じゃ問答無用なんでしょ? 車で使うための物を車に積んでおけないなんて、おかしいじゃないの」
警4「いや、銃刀法に抵触しなくても、軽犯罪法に触れるんですよねぇ」
五「それはなぜ?」
警4「軽犯罪法でもね、刃物を所持することは禁じられてるんですよ」

理由を問わずか? それはねこみみだぞ。

揉めてる最中にさらに 5 人目登場。どうやら 4 人目と一緒に PC に乗ってきたらしい。目があって、「どうも」と会釈してきたので、「どうも」と軽く挨拶を返して、問答続行。

五「こんなコンビニで売ってるようなものでも?」
警4「そうです。まあ、旦那さんはしっかりした方だから、そんなことしないのはわかるけど、やっぱりね、最近いろいろ起きてるでしょう? だからね、どうしてもやっぱり神経質にならざるを得ないんですよ」
五「そりゃあわかりますけどね、土浦のあんな事件もあったことだし。だからといって、『仕事以外の所持は理由を問わず一律禁止』ってのはおかしいでしょう。納得できないよ、そんなの」
警2「納得できなくても、それが法律です! 凶器になりうるものですから!」
五「だから、それはおかしいって!」

話が堂々巡りになってきたところへ、4 人目が割って入った。

警4「とにかくね、今回はこれで結構ですから。身分もしっかりしてるんでしょう?」

「身分」てなんのことだ。こちとら泣く子も笑うド平民ですが、何か?

五「‥‥‥え?」
警4「や、あの、保険証とか社員証とか、そういう『身分を証明するもの』は持ってないですか?」
五「さっき運転免許証見せたけど?」

じろりと 2 人目を見る 4 人目。視線を追ってそちらを見ると、2 人目が「いや、あの、特に何も‥‥‥」とかモゴモゴ言っている。

警4「じゃあ、問題ないです。まあ、今、警察もピリピリしてるってことなんですよ。だからね、まあ、こういう trouble の元にもなり得るんでね、できるだけ、載せないようにしておいてください」

非常に納得がいかないのだが、せっかくこの場を収めようとしてくれているので、それに乗っておくことにする。寒いし。

五「ええ、そうしましょう」
警2「絶対に仕事以外で持たないでくださいよ!」

まだ言うか。ここで「わかりました」と言って逃げておくのが利口なんだろうが、自分の納得のいかないことに対して言質を取らせる気はさらさらないので、反論せざるを得ない。

五「だから、それは断言できないっての。何で『正当な理由』ってのが仕事だけで、しかも『毎日使うものでなきゃ駄目』なわけ?」
警4「いや、まあ、いつも載せてあるとついカッとなって使っちゃうこともあるでしょう?」
五「そんなこたあないよ。」
警4「まあ、旦那さんがそういうことをしないのはよくわかるけど。もしかするとそれを強盗とか、犯罪に使う可能性だってあるわけでしょう?」
五「こんなもの、その辺りのコンビニとかでいくらでも売ってるじゃない。だいたい今回だって、荷室覗き込んで『刃物はないか』って言うから、自分から『カッターならある』って出したんだよ? グローブボックスから。捜索の結果発見されたとかじゃなくてさ。正直に協力してんのに、かえって馬鹿を見てるじゃないの。そこまでいうなら、身分証を提示しないと買えないようにすればいいんじゃないの?」

座が静まり返る。私ゃそんなに変なことを言ったか?

そこへ、先ほどからずっと黙っていた 5 人目が口を開いた。

警5「まあ、とにかくね、今回の件は、不問にします。だからね、できるだけ持たないようにしてくださいね」
五「ええ、そうしましょう」
警2「車には乗せないでくださいよ!」

ナントカの一つ覚えかこいつは。

五「できるだけ、ね」
警2「今度私があなたに会って、もしそのときに車に載せていたら、今度は署までご同行いただきますから。いいですね!」
五「ああ、いいですよ?」

望むところだ。

鼻を膨らませて威し文句をいい放った直後、2 人目の態度が急変した。

警2「お時間を取らせて、すみませんでした!」

敬礼ではないが、きっちり礼までしてきやがりましたよ。しかも、「ご協力ありがとう」とかじゃなくて、「すみませんでした」ときた。何なのこの豹変ぶりは。‥‥‥一瞬 2 人目と私の斜め後ろの 4 人目の眼があっていたような気がするのだが、気のせいだろうか。

とにかく、それを合図に解散となった。私は運転席へ、警官は皆 PC へとぞろぞろ歩き出したが、1 人目だけは私の行く先に立ちはだかるように立ったまま、威圧するように見下ろしてきた(長身だったのだ)。いくら睨み付けられても、やはりこちらには疾しいところはないので、「お疲れさん」と言い残して運転席へ戻り、ようやく出発。どうせなら行き着くとこまで行ってみたかったもんだが。警官は PC の前に集まって何やら話していたようなのだが、何の話だろうね?

もう空いてる飯屋もそうそうないので、豊洲まで走って Volks で steak を喰って帰る。


「補修用工具」として自動車にカッターナイフを常備するのは「正当でない刃物の携帯」に当たるのか?(その 2) [雑感]

さて、帰ってからすぐに調べてみた。まずは銃刀法。

銃刀法の正式名称は「剣類所持等取締」だ。つまり、刃物については主に「刀剣」が規制対象となっており、これに該当するものは第二条 2 項で次のように定義されている。

この法律において「刀剣類」とは、刃渡十五センチメートル以上の刀、剣、やり及びなぎなた並びにあいくち及び四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。

飛び出しナイフのことは置いておくと、簡単に言えば「刃渡り 15cm 以上の刃物」が対象であることがわかる。これらについては、所持が許可される場合とその際の届出、またそれらに反した場合の罰などが規定されている。

では、「刃の長さが 6cm」というのはなにか。これは二十二条にあって、「刀剣類には該当しないが、所持を規制する刃物」として扱われている。

 (刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
第二十二条  何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。

ここでいう「政令で定める種類又は形状のもの」は、この法律に付帯して施行された政令である「銃砲刀剣類所持等取締法施行令」に定められている。

 (刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物で携帯が禁止されないもの)
第九条  法第二十二条 ただし書の政令で定める種類又は形状の刃物は、次の各号に掲げるものとする。
一  刃体の先端部が著しく鋭く、かつ、刃が鋭利なはさみ以外のはさみ
二  折りたたみ式のナイフであつて、刃体の幅が一・五センチメートルを、刃体の厚みが〇・二五センチメートルをそれぞれこえず、かつ、開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの
三  法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のくだものナイフであつて、刃体の厚みが〇・一五センチメートルをこえず、かつ、刃体の先端部が丸みを帯びているもの
四  法第二十二条 の内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが七センチメートル以下の切出しであつて、刃体の幅が二センチメートルを、刃体の厚みが〇・二センチメートルをそれぞれこえないもの

この中で「法」と言っているのは、本体たる銃刀法のこと。また、これらの中に現われる「内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さ」というものだが、これは「銃砲刀剣類所持等取締法施行規則」で次のように測るよう定められている。

 (刃体の長さの測定の方法)
第十七条  法第二十二条 の内閣府令で定める刃体の長さの測定の方法は、刃物の切先(切先がない刃物又は切先が明らかでない刃物にあつては、刃体の先端。以下この条において同じ。)と柄部における切先に最も近い点とを結ぶ直線の長さを計ることとする。
(第2〜4項は略)

「法」とは同じく銃刀法のこと。つまり、銃刀法第二十二条や施行令第九条でいう「刃体の長さの測定方法」をここで定義していますよ、ということだ。で、これによると、一般的な形状のカッターナイフは刃を完全に収納した場合に刃の出る側の先端が「く」の字の形状になっているので、その先端を起点とし、刃を目一杯出したときの刃の先端までの直線距離を測ればいいということになる。紛らわしいのは、「刃のついている部分の長さ」でないことだ。そのため、「刃渡り」という用語ではなく「刃体」という言葉を用いているのだろう。

さて、私が車に積んでいたカッターを家に持って帰って測ってみると、「刃体の長さ」はきっかり 8cm であった。つまり、maker はこの規定をある程度意識して作っているのではないか、と推測することもできる。ただし、電工などで用いられる大型のものなので「刃体の幅」は 18mm あって施行令九条二項には該当しない。また、slider が auto lock 機構を備えているため、「開刃した刃体をさやに固定させる装置を有しないもの」という条件にも当てはまらない可能性がある。つまり、「銃刀法で無条件に携帯が許可されるものではない」ということになり、「業務その他正当な理由による場合」以外は違法、ということになる。‥‥‥ん? 「業務その他」? てことは、少なくとも「仕事以外は全て違法」ということにはならないね。ついでに言えば、「自動車の運転」は、過失によって交通事故で他人に怪我を負わせたりした場合にかつて「業務上過失傷害罪」に問われたことでもわかるように、運転そのものが(目的の如何を問わず)「業務」に当たる。自動車の安全運行に必要な整備や補修も広い意味では「運転」に含まれるような気はするのだが、実際どうかはわからない。

一方、軽犯罪法のほうはどうか。こちらは、早くも第一条二項でこう決められている。

第一条  左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。 二  正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者 (一・三〜三十四号は略)

こちらは長さなんて無関係。さらには、所持目的から「業務その他」という文言すら外れている。その代わりに、「隠して」という条件が加わっている。

結局のところ、刃渡りが 15cm 未満の刃物では、銃刀法の二十二条はただし書きを除けば軽犯罪法の sub-set になっていることがわかる。Sub-set だ、というのは「業務」が明らかに「正当な理由」と判断できる分だけ軽犯罪法よりも緩いと考えられるからだが、それでも結局はどちらも「正当な理由」であることを要件としているので、警官が「その業務にその刃物は必要ない」と判断すれば事情は一緒。つまり、両方を加味すると、

  • 銃刀法二十二条 ただし書きに該当する刃物を「正当な理由で」かつ「隠さず」持ち歩いていた場合、罪にはならない
  • それ以外は全て gray

ということになる。一時期秋葉でヲタを対象とした「刃物狩り」が話題となったが、軽犯罪法を根拠としている可能性が高い。ちなみに、検索してみたところ、軽犯罪法で言う「隠して」持つとは、「服の内 pocket に入れたり holster で吊すなど、外観からは見えず、かつすぐに取り出せる状態」を指すらしい。

でまあ、結局は「自動車の車内にカッターナイフを保管することは「正当な理由による所持」に当たるのか、というところの話にまた舞い戻ってきたわけだが、これについてはある弁護士が相談に対する答の中でこう書いている。以下抜粋。

Q. 先日、車内で休んでいたところ、パトカーが来て免許証の提示を求められました。免許証を見せると、「すいませんが、トランクの中とかも見せてもらっていいですか?」と言われたので、やましいことはないので素直に見せました。トランク、ダッシュボード、コンソールボックスと見たところ、コンソールボックスから折りたたみ式のペンチ(ミニナイフ、缶切り等の付いた物)が出てきました。「これは、何に使うの?」「工具です。」「ナイフが付いてるから持っていてはいけない。」「じゃあ、没収していいですよ。そんなこと言うなら、いらないから持っていって下さい。」「没収するのもただ没収はできないから、警察署で書類を書いて。」と言われたので、渋々警察署に行くと別の警官が出てきて、何の説明もなく供述書を作り始めました。便利だと思って車の中に入れておくことが、いけないことだと知らなかった(警告では済まないのですか?)。「没収の書類を書くから」ということだったのに何の説明も無く供述書を作られ、指紋を採られ、写真撮影された(騙された感じがします)。
A. お気付きでないようですが、あなたは現行犯逮捕されています。軽犯罪法か銃刀法違反のどちらかです。ミニナイフの刃渡りの長さから考えれば、軽犯罪法(1条2号)だと思います。否認するとしたら調書を取られる段階でナイフを車内に保管していた「正当な理由」(軽犯罪法1条2号)を主張するべきでした。簡単な調理(ドライブの時果物の皮をむくなど)、職業上の理由(あなたは建設業に従事されているということなので)、便宜からちょっとしたナイフを車内に保管することは何の問題もありません。正当な理由があるのに刃物を一切持ち歩けないなんて、そんなバカなことはありません。

さあ来た。質問者はいわゆる「ツールナイフ」の類を持っていたようなのだが、車の中で果物の皮を剥いたり、さらには「便宜から」保管しておくことでも問題ないという(文房具屋でも買えるカッターナイフは「ちょっとしたナイフ」だと思うんだが‥‥‥。今日の警官 4 も「サバイバルナイフとかじゃあないし」と言っていたし)。

実際のところ、「車の緊急補修を目的(のひとつ)として車内に保管する」ことが「正当な理由」に当たるかどうかはわからない。一度相談窓口に訊いてみるか。警視庁相談センターの利用目的に「警察に対する意見や要望」「その他、防犯・家事・民事に関する相談など」と掲げられていることだし。


「補修用工具」として自動車にカッターナイフを常備するのは「正当でない刃物の携帯」に当たるのか?(スピード解決編) [雑感]

やっぱり気になるので、早速「警視庁総合相談センター」(#9110)に電話をしてみた。30 秒以上 call 音が続いたので、もしかして繋がらないか‥‥‥? と思った頃、電話が繋がる。嘱託っぽい年輩の方が出てきたので、「刃物の所持のことについてちょっとお訊きしたいことがあるんですが」と切り出す。

「あー、刃物の所持。軽犯罪法の関係ですね?」
「ええ、そうです」(← どちらにも絡むので間違ってはいない)
「ああ、そうですか。東京都在住の方ですね?」(← 一応管轄かどうか確認したのだろう)
「そうです」

すると、「その分野を専門にやっている部署があるので、そちらに訊いてください」とのこと。警視庁の代表番号を教えられ、「繋がったら、『地域指導課 捜査指導 第2係』を呼び出してください。そこが、(条文の)適用基準とか、そういうのを全部やってますんで」。

礼を言って一旦電話を切り、教えられた警視庁の代表番号へかけ直す。‥‥‥今度は call 音が鳴らないでいきなり交換台の女性が出てきましたよ。早っ。

教わった担当部署を言って電話を廻してもらうと、ものの 10 秒も待たないうちに、「お話し下さい‥‥」という声。これまた早いな。

出てきたのは、ずいぶん渋い声の男性。だんでぃー。

「はい、どういったことで?」
「えー、刃物の所持に関してですね、軽犯罪法とですね」
「ああ、軽犯罪法ね」
「それと銃刀法の規定に関連してですね、お訊きしたいんですが」
「はい、銃刀法ね」
「実は、今日の日付が変わる頃、車に乗っていて亀戸附近の路上で職務質問を受けまして」
「はぁ」(← なんだ、怪しい奴か? という雰囲気)
「ひと悶着あったんでお尋ねしたいんですが」
「ええ」
「自動車の補修を目的として自動車のダッシュボードに文房具屋で売っているようなカッターナイフをしまってあった場合、これは『正当な理由による所持』にはならないんですか?」
「‥‥‥うーん、正直なところ、判断は難しいですねぇ」
「万一の時の車の補修のために積んでおくのは法律に触れるんですか?」
「んー‥‥‥実際に、それを修理に使ったことはありますー?」
「ありますよ」(即答)
「それはどういうことですか?」
「車に ETC を付けてまして、これは、首都高で『ワンストップサービス』ってのがあるんですが、その場でカードを申し込んで取り付けまでやってくれるっていう」
「ええ」
「それでしばらく使ってたんですが、ある日高速を走ってたら足下から「ばちっ」と音がしまして」
「はあ」
「見たら、ETC 装置の lamp が消えてたんですよ。で、そのままでは高速を降りられないでしょう? 装置が動かなくなってるんで」
「ええ、ええ」
「で、仕方がないんで近くの PA に止めてですね。調べてみたら、取り付けの時に長さが余った配線を業者がステアリングコラムに巻き付けててですね」
「ほう」
「Handle を廻しているうちにそれで線が引っ張られて、コネクタが半抜けになってヒューズが飛んでたんですよ」
「それを直したと」
「そうです」
「ん〜、それを証明することってできます?」
「‥‥いやぁ〜、自分で直しちゃったからねぇ」
「なかなか難しいよねぇ〜、そういうのの証明って。‥‥それはいつ頃ですか?」
「んー、去年の秋口ですねぇ」
「それからずっとしまったまま忘れてたと」
「いや、万一のことがあるから、入れてあるんですよ。もう 10 年経ってる車なんでね、いつなにがあるかわからない」
「ああ、なるほどねぇ。‥‥‥そういった事実があったことはその場で言いました?」
「いやもう、『持ってるのが駄目』の一点張りでそれどころじゃなくなっちゃったんで、詳しいことは話せなかったんですが、『修理に使ってる』ってことは言いました」
「ああ、そうですか‥‥‥」
「あと、店で自動車用品なんかを買ったときにビニールを開封したりするんでね、それも言いました」
「んー、それはねぇ、『正当な理由』でないとは言えないですねぇ〜」(← つまり「検挙の理由には当たらない」ということ)
「しばらく揉めまして、最終的に 5 人も警官が集まって」
「ははは、そんなに来ましたか〜」
「ええ。最初に 2 人。警邏してたらしくて。で、応援で 1 人来て、さらに『上役を呼んだから』と 2 人来られて」
「また、ずいぶんと大勢‥‥‥」
「最終的には、その上役という方が『まあ、どこにでも売ってるものだし、できるだけ積まないでおいてください』とまとめて終わったんですが、最初に来た警官が言うには、『仕事で、しかも毎日使ってるんでなければ、全て違法』だっていうんですけど」
「ん〜、それはまた極端ですねぇ」

以下、担当者の言をまとめると、

  • やはり、凶器として使用され得るものは、市民の安全を守る立場からすると、あまり持たせたくはない。一般論として、「実際に手元にあると、つい魔が差して犯罪に使ってみたくなる」可能性も否定はできないからだ(これは職質騒動の際に「上役」も言っていた)。
  • そうは言っても、やはり実際に必要なものは必要だ。まして、いつでも入手可能なものに目くじらを立てても、実効性はない。
  • で、所詮道具は使う人次第なので、後進の指導に際しては「人を見て判断しろ」と指導している。(暴)なら見ればわかるし、あからさまにそうでなくても、怪しいかどうかは「臭い」でわかる。

ということだそうな。まあ、もっともな話である。

「じゃあ、緊急補修用に車内にカッターをしまっておくこと自体に違法性はないんですね?」
「正直なところ、できれば止めて欲しいんですが、仕方ないでしょうね」
「そうですか。安心しました (^^;

そうそう、もうひとつ訊いておかねばならない。

「もうひとつ、そのときのやり取りで気になることがあったんですが」
「なんでしょう?」
「その、『仕事以外で凶器になりうるものを持つのは違法だ』という警官にですね、『そんなこと言ったって、車の中には他にいろんなものがあるじゃないか。ドライバーとかだってあるんだし』と言ったら、『ああ、プラスはいいですが、マイナスドライバーは違法です』」と言われたんですけど、」
「ハッハッハッハッ(爆笑)」
「これの根拠はなんですか?」
「あー、それはですねぇ。別の法律になるんですけど、えーと、『とくしゅかいじょうようぐ』のなんとか*1っていう‥‥‥私も法律の正確な名前は覚えてないんですが」
「はい」
「それにですね、書いてあるんですよ」
「そうですか。‥‥‥『かいじょう』っていうのは、『鍵を開ける』ってことですか? ピッキングとか」
「そうですそうです。先端の幅が 5mm 以上、長さが 15cm 以上とか、全部決まってる*2んですよ」
「はー。そうなんですか〜」

それ知らんかってんちんとんしゃん。

「ただねぇ。それもあくまで『裸の状態で服の内 pocket に入れて持ち歩いていた』とかっていう話でねぇ。‥‥‥実際にあったんですよ、そういう工具をこっそり持ってたのがいたんで、調べてみたら、空き巣狙いでね。余罪が 100 件以上あったなんてことが」
「はー、そうなんですかー‥‥‥」
「でも、車の中の工具 set には普通に入ってるじゃないですか」
「そうですよねぇ。うちのも tool box の中に入ってますし。もしそんなのも駄目とかいうことになると、自動車用の tool set とか積んでる人は、全員検挙じゃないですか」
「(笑)まあ、そんなことはないんでね。やっぱりちょっと(その警官は)極端ですねぇ。今いろいろと物騒なんで、『そういう(違法性のある)ものは取り締まらなきゃ』っていうので頭ん中が一杯になってたんじゃないですかねぇ」
「うーん、まあ、わかるんですけどねぇ。ただねぇ、今回だって、最初トランク見せてくださいっていうからどうぞって見せて、そこを見ながら『刃物とかありませんよねぇ‥‥‥』って言うから『ダッシュボードにカッターはあるけど』ってわざわざ取り出して見せてるんでね」
「ああ、そういうことですかー」
「なんか、協力してるつもりなのに頭ごなしに『仕事で使わないものは全て違法』とかって言われても、反感しか抱かないんですけどね」
「まあ、そうですねぇ。だいたい、人を見ればわかるもんですからねぇ」
「そもそも、本当に怪しい奴ってのは、隠したがるもんじゃないかと思うんですけど」
「そうです。」
「こっちは疾しくないから進んで取り出してるわけで」
「仰る通りですね。疾しいことがあれば必ず隠そうとしますから」
「なんか、一時期『刃物狩り』とかって話題になったじゃないですか」
「まあ、あれはね。話題になったほうが抑止効果があるんで (^^;。‥‥‥今でもやってるんですよ?」
「そりゃあね。実際にこうやって揉めてるわけだし (^^;。でもあれも、『刃物とか持ってますか』って訊かれて『はい、これです』って出した人が軒並検挙されてるって話もあって、なんかこう、正直に名乗り出た人の反感を集めてるようにしか見えない面もあるんですが」
「まあ、あれもねぇ。『隠し持っている』ことが構成要件なんでね。『持ってますか』『はいこれです』って出してる時点で、もう『隠し持って』いないわけなんで。やりすぎな面はありますねぇ。ただまあ、やっぱりね。刃物を持ってるとつい気が大きくなっちゃったりってことは、あると思うんでね。難しいですねぇ」
「まあ、そうですねぇ」

「護身用のナイフ」に正当性があるかどうかは別として(「その刃を人に向ける」ことを目的にしている以上、結果として相手に危害を加えることを想定しているとしか思えない面が確かにある)、まあとにかく、車にカッターナイフやマイナスドライバーを積んでおくことそのものに違法性はないということがわかって、安心したよ (^^;

最後に念の為の確認をしておこう。

「最後に上役の方がせっかく丸く収めようとしてるのに、『仕事以外の所持は違法』と言っていた警官が食い下がってきましてね」
「ほほーう」
「『今度この辺りであなたを見掛けて、その時にまた車にナイフを積んでたら、今度は署まで同行していただきますから』って最後に脅されたんですが」
「ハッハッハッハッハッハッ(大爆笑)‥‥‥『若い』ですね(ニヤリ)」
「そうですね (^^;。で、そうなったら、署に行って『正当な理由』で徹底的に争ったほうがいいんですね?」
「ええ、そうです。‥‥‥負けないで。(ニヤリ)」
「わかりました (^^;。‥‥‥どうもすみません、お手数をお掛けしました」
「いえいえ。失礼しまーす‥‥‥」

‥‥‥なんか、励まされちった(爆)。

*1: 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律のこと。「ピッキング対策法」とも呼ばれるとか。

*2: 特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律施行令で詳細が定められている。


「補修用工具」として自動車にカッターナイフを常備するのは「正当でない刃物の携帯」に当たるのか?(つけたり)(5/30 追補) [雑感]

このところ view が増えてるようなので、若干補足。

まず、地域指導課捜査指導 2 係に問い合わせた結果についてですが、先方の口ぶりなどから察するに、

  • 現に使用した実績がある
  • 現在に至るまで継続して使用している(← 「毎日」「毎回」である必要はなく、「時々」程度でよさげ)

ことが重要風味。つまり、「一度使ったが、その後は使わないまま放置してあった」「使ったことはないが、いつか使うかもしれないので」「ほとんど使わないが、あったら便利そうだから」という状態で(司法関係者が好んで使う表現で言えば「漫然と」)積んであった場合、やはり「正当でない所持」と見做される可能性があります。

次に、ドライバーの所持に関する件。−ドライバーなど「鍵を使わずに錠を開けることができる道具など」の所持を規制しているのは特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律。こういった道具はその第二条第二号と第三号で「特殊開錠用具」または「指定侵入工具」として定義され、同じく第三条と第四条で「業務その他正当な理由のない所持」を禁じている(後者については「隠し持つ」ことが構成要件)。具体的にどういったものが該当するかは「政令で定める」とされていて、同法の施行令に詳細がある(担当者が言っていた「幅 5mm 以上、長さ 15cm 以上の−ドライバー」は第二条第一号に定められている)。法も政令も非常に短いので、読んでみるといいかも。

蛇足。「護身用の刃物の所持」ですが、警視庁では明確に「正当な理由には当たらない」としています。警視庁の site の「刃物の話」を参照のこと。‥‥‥そういや、この page にも問い合わせ先として「地域指導課捜査指導 2 係」の名がありますな。



2008/03/28 (金)


2008/03/29 (土)


2008/03/30 (日)


2008/03/31 (月)


[後日へ続く]

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