エブリイいじり / 車速連動ワイパー
51 エブリイのワイパーには車速連動機能がない。普通に走ってるときにはそれでもいいのだが、信号待ちなんかで止まってるときには煩く感じる時がある。で、連続動作しているときには手動で間欠に切り替えればいいが、もともと間欠動作してるときには止めるしかなく、また単発動作スイッチもない。純正オプションにもワイパーコントローラがあるんだが、これは間欠動作の停止時間を連続して変えられるというものであり、状況に応じて手動で調整しなければならないというのは変わらない。
で、カーナビを付けたときに車速パルスを取り出し、さらに車速感応ドアロックを付けたときに車速パルスを車速に応じた電圧に変換する回路を組んだので、その信号を使って低速時に自動でワイパーを間引くようにしてみた。
回路図
回路の説明
ワイパーとの接続
一番上にある 4 本の線は、純正ワイパーコントローラのハーネスのコネクタに現れるもので、コントローラの代わりとしてこの回路を接続するように作っている。
信号名 | 役割 |
---|---|
HI | 高速動作(電源線) |
LO | 通常動作(電源線) |
POS | 定位置 SW のコモン端子(ワイパーが初期(停止)位置にあるときは GND に接続され、動作中は 12V がかかる) |
WASH | ウォッシャースイッチ(スイッチが押されているとき 12V がかかり、押されていないときは off になる) |
なお、HI 線と LO 線にはリレーが挿入されており、コイルに電流が流れていないときは回路は標準状態に、コイルに電流が流れると動作が変化(LO または間欠動作時はモーターが停止、HI 動作時はモーターが標準速動作)するようになっている。コイルの電源はその線自体から供給されるため、線に 12V が印加され、かつ(回路図上で)コイル右側の端子が GND に落ちたときにリレーが動作することになる。
ちなみに、LO 線に挿入されたリレーは、コイルの右側の端子から下に延びる線にダイオードが挿入されている。この線はフォト MOS リレーを介して POS 線に接続されるが、ワイパーの動作中にワイパーのスイッチを off にすると POS 線(ワイパーの動作中は 12V がかかっている)から LO 線へ電流が逆流しようとするため、それをダイオードによって防止している。
車速検出回路
一番下にあるのが、車速を検出する回路。車速に連動した電圧(SPD V)を一旦ボルテージフォロワで受けた後、電圧比較回路で 1MΩ の可変抵抗で設定した電圧(閾値)と比べている。閾値を 1.6V にすると、動作の変化点が概ね 15km/h になり、これを超えると右側の FET が on に(そのとき右側の AQY410EH(フォト MOS リレー)は off)、割り込むと FET が off(フォト MOS リレーは on)になる。
なお、AQY410EH はノーマリ・クローズ型で、駆動電流が流れていないと出力側が on(短絡)で、流れると出力側が off になる。
間欠動作回路
車速検出回路の上にある、POS と LO が入力になっている回路が、間欠動作回路。間欠動作時には停止時間を延ばし、連続動作時には間欠動作にする。
ワイパーが動作しているとき、POS には 12V がかかっている。この時、10kΩ の抵抗を介して 20μF のキャパシタが充電され、電圧が一定以上に上がると FET が on になってそこに接続された AQY210EH(フォト MOS リレー)も on になる。しかし、フォト MOS リレーの 4 番ピンが接続されている POS は 12V なので、LO 線に挿入されたリレーは on のまま。
ワイパーが定位置(停止位置)まで戻ってくると、POS が GND に落ちる。それにより、LO 線に挿入されたリレーのコイルも回路図で右側の端子が AQY210EH と 2 つの AQY410EH を通じて GND に落ちる。
ここで、LO 線の状態によって動作が変わる。
ワイパーが間欠動作の場合
- POS が GND に落ちたのを検出すると、車両側の回路が LO 線を off にする。この時、LO 線に挿入されたリレーは電源が供給されず on のまま。また、キャパシタへの充電も停止するが、可変抵抗の先にある AQY210EH も電源が供給されず off なので、キャパシタに溜まった電荷は行き先がなく、キャパシタの電圧は低下せず、FET の状態も変化しない(on のまま)。
- 間欠動作の停止時間が経過すると、車両側の回路が LO 線に 12V を供給する。それにより、LO 線に挿入されたリレーが動作して LO 線が off になるとともに、キャパシタ左側の AQY210EH にも電源が供給されて on になり、キャパシタからの放電が始まる。ただし、可変抵抗は大きめの値に調整してあるため、放電は緩やかに行なわれる。
- 放電が進んでキャパシタの端子電圧が低下すると、FET が off になり、そのドレインに接続された AQY210EH も off になる。すると、LO 線に挿入されたリレーもコイルに電流が流れず on に戻るため、LO 線の出力側に 12V が接続され、ワイパーが動作し始める。
この動作によって、元々の間欠停止時間に加え、キャパシタからの放電が緩やかに行なわれている間だけ LO 線が on になるのに遅延が発生する分だけ停止時間が延びることになる。
ワイパーが連続動作の場合
POS が GND に落ちても、車両側の回路は LO 線に 12V を供給したまま。そのため、LO 線に挿入されたリレーはコイルに電流が流れて off になり、またキャパシタからの放電も直ちに開始される(放電が緩やかなのは間欠動作時と同じ)。そして、キャパシタの電圧が低下すると、「FET が off → ドレインに接続された AQY210EH が off → LO 線に挿入されたリレーのコイルに電流が流れなくなる」という連鎖によってワイパーモーターへ 12V が給電される。
この動作により、ワイパーが定位置に戻って POS が GND に落ちてからキャパシタの放電が進むまでの間 LO 線に電源が供給されなくなることで間欠動作することになる。
ウォッシャー動作回路
間欠動作回路の上にある、WASH が入力になっている回路は、ウォッシャースイッチに連動する回路で、ウォッシャースイッチを押した時に一定時間強制的に連続動作させるもの。標準の動作ではウォッシャースイッチを押すと動作モードにかかわらずワイパーを一定時間連続運転するが、それに合わせてこの回路の動作を一時的に強制無効化している。
WASH 線は、スイッチが押されているとき 12V が供給され、押されていないときは off になる(GND を含めてどこにも接続されない)。そこで、WASH に 12V がかかると 1kΩ の抵抗を介して 20μF のコンデンサを充電し、off になると 1MΩ の可変抵抗と 10kΩ の抵抗を介して放電される。この時、充電は比較的速やかに行なわれ、放電は緩やかに行なわれるため(放電時間は可変抵抗により調整できる)、右側の FET はスイッチを離した後も一定時間 on のままとなる。それにより、フォト MOS リレーがスイッチを離してもしばらく off のままとなるので、その間はこの回路による制御が無効化される。
フォト MOS リレーの電流制限
フォト MOS リレーはコイルではなく LED で駆動されるため、全て 5.6mA の CRD(定電流ダイオード)を挿入して駆動電流を制限している。
ワイパー高速動作時の挙動
ワイパー高速動作時は、HI 線に 12V が供給される。この時、車速検出回路が低速を検知すると、右下のフォト MOS リレーの駆動電流が流れなくなることで on になり、それによって HI 線に挿入されたリレーのコイルに電流が流れる。すると、コイルに電流が流れたときに単に off になる LO 線のリレーとは異なり、HI 線のリレーは電流の行き先をワイパーモーターの HI 端子から LO 端子へ切り替える働きをする。
この動作によって、低速を検出して HI 線のリレーが作動すると、LO 線側のリレーの状態にかかわらず LO 線に給電され、結果として間欠動作回路が無効化されて低速の連続動作を行なうことになる。