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de51v_キーレスエントリーアダプタ回路

エブリイいじり / キーレスエントリーアダプタ回路

51 エブリイには純正オプションのキーレスエントリーが存在する。それに備えてか、ジョイポップなどには集中ドアロックが搭載されていて、運転席ドアのロックノブに連動してすべてのドアがロック・アンロックされる。

社外品のキーレスエントリーを付けるにあたって、純正キーレスエントリーと同じようにできればベスト。しかし、それを接続する先である集中ドアロックコントローラはインパネのかなり奥(足元近く)にあり、インパネを相当ばらさないと到達できない。一方、運転席ドアのロックノブから集中ドアロックコントローラへの配線はドアのグロメットを通過する関係で手の届きやすい位置にあり、かつ汎用の 6P コネクタで中継されているため、ここに回路を接続するのも容易。

そこで、社外キーレスエントリーユニットからの出力を変換して集中ドアロックを制御するようにした。

回路図

回路の説明

購入したキーレスエントリーユニットは、「リモコンで解錠・施錠のボタンを押すと、ユニット側のそれぞれのリレーが一定時間(1 秒間)切り替わる」というものだった(この仕様は社外品として非常に一般的)。一方で、ドアのロックノブは、ロック状態で off(どこにも繋がらない)、アンロック状態で GND に接続されるスイッチになっている。

そこで、キーレスエントリーユニットのリレー端子を「リモコンのボタン操作によって 1 秒間 GND に落ちる」というように結線し、それで駆動するラッチリレー(回路図の右上)をロックノブからの配線の代わりに接続すれば、リモコンによるロック・アンロックは簡単に実現できる。ちなみに、ロックノブをアンロック状態にしたとき、GND との間は完全なショートではなく 100Ω 程度の抵抗があった(多分単純に接触抵抗が発生していただけだとは思うが……)。そこで、リレーの出力にも安全のために 100Ω の抵抗を挿入している。

ただ、これだとキーやノブによる操作ができなくなってしまう。使い勝手の面や、特にキーレスエントリーユニットが故障した時のことを考えれば、これは非常によろしくない。そこで、「ロックノブを操作した際、キーレスエントリーユニットと同様にラッチリレーの端子を一定時間 GND に落とす」回路を付加して、どちらでも操作できるようにした。

キーやロックノブによる操作を変換する回路

上記の通り、ロックノブは GND との間に接続されたスイッチである。これを抵抗で電源に接続(プルアップ)すれば、スイッチの on/off を電圧変化の形で取り出すことができる(これはスイッチの on/off を検出する際に極めて一般的に用いられる手段)。あとはその電圧変化をきっかけに GND に落ちるようにするのだが、キャパシタと抵抗による単純な積分回路を組んだ。といっても、利用するのは積分回路の電圧変化ではなく、キャパシタに対する充放電電流。充電時と放電時の電流をダイオードによって分離し、それぞれでフォト MOS リレーを駆動。その出力を GND にショートさせ、動作時に「一定時間 GND に接続される」ようにする。あとは、その出力をキーレスエントリーユニットからの配線と並列に接続するだけ。

なお、キーレスエントリーユニットのリレーを「ボタン操作時に GND へショート」という形で接続したのは、こうやって別の回路からも駆動する際に手軽に接続できる(すべて単に並列接続するだけで、電流の逆流などを考慮しなくていい)というのが大きな理由。

初期状態

まず、ロック状態に置かれた時を考える。スイッチが off なので、キャパシタには 12V から 1kΩ の抵抗を介して充電され、完全に充電されると電流が流れなくなる。これが、初期状態になる。なお、万一の場合に電流が逆流しないよう、抵抗には直列にダイオードを挿入している。

アンロック操作時

ノブが動いてアンロック状態になると、スイッチが閉じて GND に接続される。すると、キャパシタに溜まっていた電荷が放電されるのだが、その際ダイオードの向きから上側のフォト MOS リレー(ノーマリオープン型の AQY210EH)を経由して電流が流れる(回路図に青色で「Discharge」と書いた矢印)。フォト MOS リレーは通常の(メカニカル)リレーとは異なり、コイルではなく LED によって駆動されるため、この程度の電流でも十分 on になる。フォト MOS リレーが on になると、出力側端子が GND に接続され、これがキーレスエントリーユニットと同様にラッチリレーを駆動する。

なお、ロックノブのスイッチは抵抗値が小さいため、そのままだと一気に放電され、フォト MOS リレーの出力が GND に接続される時間が短くなるばかりでなく、フォト MOS リレーの LED に流れる電流が大きくなりすぎる危険がある(これは素子が劣化する原因になる)。そこで、直列に 1kΩ の抵抗を挿入して電流を制限している。

AQY210EH の LED の VF(順方向降下電圧)は約 1.2V なので、キャパシタは完全に充電されるとその両端で 10.8V 程度の電圧を持つことになる。ここに 1kΩ の抵抗を接続すると、ピークで 10.8mA 流れる。AQY210EH の LED の絶対定格電流は 50mA なので、十分に余裕がある。一方、キャパシタの容量を 98μF と設定すると、この回路の時定数(電圧が 63% 低下するまでの時間)は 98ms(約 0.1 秒)。その倍の時間が経過するとキャパシタの電圧が 1/10(1.08V)に低下するが、AQY210EH の平均復帰電流(出力が on から off になる電流)が 1.1mA なので、そのくらいまでは on 動作となることが期待できる。つまり、ロックノブの操作により、フォト MOS リレーの出力は GND に 0.2 秒程度短絡されることになる。ちなみに、使用したラッチリレー(G6SK-2)の動作(セット)時間と復帰(リセット)時間はいずれも 4ms 以下とされているため、200ms という駆動時間はリレーを安定して切り替えるには十分である。

なお、キャパシタの容量をもっと大きくすれば GND に短絡する時間を延ばすことができるが、あまり時間を延ばすとロックノブを素早く動かしたときに 2 つのフォト MOS リレーが同時に on になる(このとき、ラッチリレーの 2 つのコイルに同時に電流が流れて故障の原因になる)リスクが高まるため、あまり長くなり過ぎないようにこの容量にした。

ロック操作時

ロックノブがロック状態になると、スイッチがオフになり、1kΩ の抵抗を介してキャパシタが充電される。この時、ダイオードの向きから下側のフォト MOS リレーに充電電流が流れる(回路図に青色で「Charge」と書いた矢印)。すると、アンロック時と同じようにフォト MOS リレーが on し、ラッチリレーが駆動される。

なお、充電電流はプルアップ抵抗を介して流れるため、フォト MOS リレーの LED と直列に抵抗を挿入する必要はない。逆に、プルアップ抵抗の 1kΩ という値は、ロックノブの接触抵抗より十分大きく、かつフォト MOS リレーを十分に駆動する充電電流が流れるように設定している。また、上記のキャパシタの容量は、この抵抗値と CR 積分回路の時定数を基準として決定した。

de51v_キーレスエントリーアダプタ回路.txt ? 最終更新: 2018/12/30 15:19 by a-gota